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4話 彼の不運と、甘い災難

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-09-04 14:37:06

「ふぅーん……そっかぁ……じゃあ、時間あるかな? 次の時間に使う教材を取りに行くんだけど……手伝ってくれたり……する? 先生に頼まれちゃって」

「行く。手伝う!」

 俺は即答していた。そりゃあ、好きな人から声をかけられて舞い上がり、お願いされれば喜んで手伝うに決まっている。

「わぁ、やったぁ♪ 一緒に行こっ」

 ユナちゃんの後ろを歩くと、ふんわりと優しい、甘い香りが漂ってくる。彼女の動きに合わせて栗色のロングヘアがふわりと揺れ、俺は思わず見とれてしまった。

 国語の先生の準備室へ入ると、カーテンが閉められており、室内は薄暗かった。大きな棚には段ボールがぎっしりと並べられ、その棚の高さは、部屋全体を見渡せないほどだ。少し埃っぽい匂いと、印刷物の独特の匂いが充満している。先生の姿はなく、大好きなユナちゃんと二人きりの空間に、俺の心臓は高鳴っていた。

「あれ? 先生いない?」

「うん。いつもいないかな……次の時間に使うプリントを取りに来ただけだから。えっと……」

 ユナちゃんは手慣れた様子で小さい脚立を目的の場所に移動させ、登り始めた。俺はプリントか段ボールを受け取るため、彼女の後ろで待機した。

「……あ、これこれ。……きゃ!」

 大きな段ボールを引き出そうとすると、思ったよりも軽かったのか、ユナちゃんはバランスを崩し、倒れそうになる。俺はとっさに彼女の身体に手を伸ばした。これ……漫画でよく見るシチュエーションだよな……そう思うと、柄にもなく興奮してしまう。

 バランスを崩したユナちゃんのお尻が、ぷにっと俺の顔に当たった。ユナちゃんを支えようと伸ばした手は空振り、結果的に彼女を抱きしめるような形になる。その手は、スカート越しではあるが、ユナちゃんの太ももの柔らかさと温もりを感じていた。この数秒が、ずっと続けばいいのに……と、心から思った。

「ご、ごめん!! 支えようと……」

「はぅ……ありがと。ユイトくんがいなきゃ……大ケガするところだったよ」

 うわぁ……最高。ユナちゃんのお尻の感触を味わいながら話をしていた。スカート越しでも伝わってくる太ももの感触も最高に柔らかい。

「ん……ちょっと待ってて、段ボールを……っしょっと……っ」

 俺が体を触っていても、ユナちゃんはビクッと身体を震わせただけで、大声を出したり嫌がったりはしなかった。何だか……ご褒美イベントが多すぎるな? そう思いながら、俺は彼女の太ももから手を離した。

 ユナちゃんが体勢を立て直し、俺の肩に掴まって向きを変えると、可愛い顔が目の前にあった。ユナちゃんの甘い吐息を耳元に感じて、俺は興奮してしまう。まるで、抱き合っているかのような体勢だ。

「……ありがと。ユイトくん……あ、あれ……プリント! 取るの忘れてた! もう一回……」

 ん……これは、普通、男の俺が取るべきだよな? でも、もし言わなければ、また俺が支える役目になるんじゃないか? いやいや、そんなことを期待してはいけない。

「いや、俺がプリントを取るよ」

「え? 悪いよ……でも、わたし……ドジだからぁ……お願いするね。わたし、支えてるから」

 まあ、支える役目を俺が申し出たところで、脚立を支えるだけだ。プリントを自分で取って、ユナちゃんの役に立てた方がポイントが高いだろう。俺は、彼女に手を貸すために、脚立の前に立った。

「あの段ボールを下ろせばいいんだよね?」

「うん。おねがい……」

 ユナちゃんは申し訳なさそうに俯き、チラリと俺を見た。その頬が桃色に染まり、目を潤ませて見えるのは、薄暗い部屋のせいだろうか。いや、気のせいではない。その表情は、はっきりと俺にも見て取れた。

 俺は慌てて視線を逸らし、段ボールに手を伸ばす。すると、ふわっと体が宙に持ち上がり、ユナちゃんと同じようにバランスを崩した。慌てたユナちゃんが俺の身体を支えようと抱きついてくるが、俺を支えられるはずもない。このままでは、ユナちゃんを下敷きにして倒れてしまう。

 俺はユナちゃんを抱きしめ、無理やり体を回転させた。そして、俺が下敷きになる形で、背中を床に叩きつけるように倒れた。

 ドンッ!! という大きな音を立て、俺の息が一瞬止まった。体中の内臓が痛むような衝撃だったが、そんな痛みも吹き飛ぶ光景と感触が目の前に広がっていた。いや、視覚的にはユナちゃんのふわっとした髪の毛が顔にかかり、視界はほとんどない。だが、その代わりにユナちゃんの柔らかな身体が密着し、ふにゅっとした胸の感触と、ぷにっとした頬の感触が俺の頬に伝わってきた。

「……わ、わぁ……だ、大丈夫……? ユイトくん……?」

 俺が強めに抱きしめていたため、ユナちゃんは抱きついたまま、俺の耳元で俺の無事を確認してくれた。俺は慌てて腕の力を抜くが、ユナちゃんは動く気配がない。

「ユナちゃん?」

「また、ユイトくんに助けられちゃった……」

「え? いや、今回ドジったの……俺だし」

 このまま、キスでもできたら……いや、絶対に嫌われるパターンだよな。この後「きゃー!」とか言って、引っ叩かれるかもしれない。俺の心臓は、痛む背中とは別の意味で、激しく高鳴っていた。

 ん……良いのか? 動く気配がない。もう俺の我慢は限界だった。

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